駄菓子屋の一件

駄菓子屋の一件

私が子どもの頃、学校行事で遠足に行くという場合、持って行ってもいいお菓子の総額を学校から指定された。また、家族旅行に行く場合、持って行ってもいいお菓子の総額を親から指定された。どちらの場合も、指定された金額の範囲で母からお金をもらい、兄と2人で家の近くのスーパーへお菓子を買いに行った。

しかし、あるとき2つの行事が重なったときがあった。つまり、明日は学校で遠足に行き、その直後の休日に家族旅行に行くというときがあったのだ。このとき、私と兄は、遠足へ持って行っていいお菓子の額と旅行へ持って行っていいお菓子の額の合計額を母から渡されて、2つのイベントあわせた分のお菓子を買いに行くことになった。確か、遠足分200円、家族旅行分500円、合計700円だったと思う。そのうえ、私にとって不幸だったことに、買いに行ったお店がいつも行くスーパーの一角にあるお菓子コーナーでなく、駄菓子屋であった。私は、スーパーのお菓子コーナーではない、お菓子しか売っていないという意味ではお菓子専門店といってもいい駄菓子屋へ行くのがそのとき初めてであった。

その駄菓子屋には、今まで見たことのないお菓子(ほとんど駄菓子)がたくさん置いてあり、興奮した私は、あれもこれも欲しくなった。しかも、駄菓子のほとんどは、駄菓子だから当然だが、5円から30円ほどの価格帯である。そして、今回は、遠足と旅行の総額700円まで買えるのである。私は、この二重三重のイレギュラーな事態に直面し、たがが外れてしまい、どんどんお菓子をかごへ放り込んでいった。

しかし、すぐに審判の時が来た。レジで会計をすると、私の買い物の合計額は、700円をはるかに上回る額となっていた。確か1000円近くに及んでいたのでなかったかと思う。私はあせった。しかし、まだ幼くて気の弱い私は、いったんレジに差し出したカゴの中から、「やっぱりこれとこれはやめておきます」というような図々しい代金調整行為に及ぶなどということは思いつきもしなかった。私は母からもらった700円のほかに、普段から使っていたお小遣いの入った赤い財布をひっくり返し、有り金全てを投入した。しかし、それでも足りなかった。レジで会計をしていた店の主人は、ぶっきらぼうで怖そうなおじさんだった。気まずい時間が流れた。「金がないならお菓子を戻してとっととここから出ていきな。」そんなことはもちろん言わなかったが、私には無言の中に勝手にそのようなメッセージを読みとった。そのとき私にひらめきが訪れた。「そうだ、あれがある!」私は、財布の別のポケットに、祖母からもらった昔のお金や記念硬貨があったことを思い出し、そして、この硬貨をもらった時に聞いた、「これは今でも現金としても使えるんだよ。でも、とっておけばもっと価値がつくだろうから使ってはいけないよ。」という話の前半部分だけを都合よく思い出し、これら硬貨をレジ台の支払用トレイに投入した。お店の主人は昔のお金を見て一瞬怪訝そうな顔を見せたが、その後、何も言わずに会計を済ませたくれたのであった。よかった。その場を何とか切り抜けた私は、駄菓子で大きく膨らんだレジ袋を隠すように持ちながら、母が待つ車へ乗り込んで兄とともに帰路についた。しかし、これは序章に過ぎなかった。私には第2の審判が待っていたのである。

帰宅した後、母は私のパンパンに膨らんだレジ袋を見て、さすがにおかしいと思ったのであろう。「これ全部でいくらしたの」と尋ねてきた。私はとっさに700円を少しオーバーしたくらいだと嘘をついた。これが良くなかった。疑った母は、レシートを出すように求めた。この時、レシートがあったのだったか、それともレシートが見つからずに1個1個お菓子の金額を足していったのだったかわからないが、とにかく代金額の確認が行われ、1000円近くに達しているという事実が判明してしまったのである。私は、母から、決められた上限金額700円をオーバーしたことに加え、その後に嘘をついたというカドで2重に怒られることになった。

しかも、我が家の場合、これで終わりではないのだ。最終審判が刻一刻と迫っていた。仕事から父が帰宅し、母から事実の報告を受けた父に呼び出され、被告人である私に対し事実関係の確認が行われた後、上に述べた2重の過ちにより、大きな雷(激怒ともいう)を落とされた。

駄菓子屋に入って精神が高揚し、会計時に冷や汗をかき、それをくぐり抜けるも、帰宅後、母から取調べを受け、最後に父から審判と罰を受けるという、ジェットコースターのように精神状態が乱高下した1日であった。私はひどく疲弊して、命からがら布団に入った。そして、自分には浪費癖があるのだという事実を、齢10歳ほどで思い知らされることになったのであった。

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この記事を書いた人

日本の片田舎で、妻と子と暮らす40代の男です。
私が子どものときに起きたいろいろな出来事をブログ形式で投稿しています。気になるタイトルや絵(私が描いています)の記事があれば気軽に読んでもらえるとうれしいです。

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