私は、鳥山明さんが描いた漫画「ドラゴンボール」、そして富樫義博さんが描いた漫画「幽遊白書」世代だ。これらの漫画では、主人公が修行を重ねることで強くなり、人間業とは思えない技を身に付けていく。実際に両主人公とも人間ではなかったことが物語が進むにつれて明らかになるのだが、それはさておき、小さい頃は、修行すればいつか本当にドラゴンボールの主人公である悟空の必殺技「かめはめ波」や幽遊白書の主人公である幽助の必殺技「霊丸(れいがん)」を使えるようになるとどこかで信じていた。
それで、暇な時は自己流の修行をしていた。何をしていたかというと、私の家には買い物の際に商品を入れる白いレジ袋が大量にあったのだが(昔はスーパーのレジ袋は無料であった)、まず、それを1つとって、空中に放り投げる。それから後は、空中にただよっているレジ袋にパンチをしたり、キックをしたりして、レジ袋を空中に浮かせ続けるというものだ。自分の中ではこれで少しずつ強くなっていると信じていたのだと思う。
母がいつもご飯を作っている台所とのれんだけで仕切られたリビングで、私は、「えい」とか「おりゃ」とか言いながら、ひたすらこの修行を続けている時期があった。多分、夕ご飯を作りながらそれを見かけた母は、わが子の将来を不安に思っただろうと推測するが、特に「バカなことはやめなさい」と止められた記憶はない。結局、かめはめ波も霊丸(れいがん)も出せるようにはならなかったが、今となっては、本当にばかげているけれど懐かしくもある思い出の1つだ。純真な子どもの「修行」を邪魔せず見守ってくれた母に感謝している。

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