たあ坊の帰還

ブログ「たあ坊の帰還」の絵

私は子どもの頃からぬいぐるみが好きだった。小学生の時、サンリオのキャラクター「みんなのたあ坊」のぬいぐるみをもらったことがあった。たあ坊はニコニコした目に大きな口を開けた、かわいらしい男の子のキャラクターである。私はこのぬいぐるみを親から買ってもらった記憶はないので、おそらく保険加入か何かのグッズとして親がもらったものが私の手元に来たのではないかと思う。私は当時、たくさんのぬいぐるみを所持していたが、また1つ私のぬいぐるみ群に仲間が加わったのである。

ぬいぐるみがやって来ると、私は必ずそのぬいぐるみに名前を付けていた。私が付ける名前は、ザッハリッヒ(=そのまま)なネーミングが多く、カバのぬいぐるみであれば「カバ」、ヒョウのぬいぐるみであれば「ヒョウ」といった具合であった。このため、たあ坊がやって来たときも「たあ坊」と名付けた。

たあ坊の肌触りはふわふわで、顔と胴体の間のところで半分に折れ曲がるくらい柔らかかった。私と兄は多くのぬいぐるみを動かしてごっこ遊びをしており、ぬいぐるみはそれぞれ必殺技を持っていたのだが(このぬいぐるみ世界でのお話については、もし機会があればどこかで書きたいと思っている)、たあ坊の必殺技は、体を半分に折ってその間に相手を挟み込む「ハンバーガー」に決まった。

このようにして、たあ坊がぬいぐるみたちの仲間入りを果たし、平穏な日々が過ぎていったが、ある日、たあ坊が手術のため入院しなければならないことになった。というのは、ハンバーガーをやり過ぎたためか、たあ坊の首のところの縫い目がとれて、中から白い綿が出てきたためである。そこで、母がたあ坊を直す必要があるといって、母の母(私の祖母)のところへ持っていくことになった。祖母は手が器用な人で、絵画も裁縫もとても得意な人であったから、たあ坊の手術は祖母に託されることになったわけである。私はたあ坊が元気になって戻ってくることを願い、たあ坊が母に連れて行かれるのを見送った。

それから1か月くらい過ぎて、たあ坊が祖母の家から帰ってきた。帰還したたあ坊は、祖母の家の独特のにおいを体にまとわせていたが、首のあたりのほつれはきれいに修復されていた。私は無事戻ってきたたあ坊を抱きしめた。ところが、母はこのたあ坊以外に別のたあ坊2体を手に持っており、これも合わせて私と兄に引き渡した。「え!?たあ坊が増えている!」

増えた2体のうち1体は、もともとの(オリジナルの)たあ坊の淡い青色の服より濃い青色の服を着ていた。また、この濃紺たあ坊はオリジナルたあ坊より一回り大きかった。他方、増えたもう1体のたあ坊は、赤い服を着ており、オリジナルより一回り小さいものであった。

2体とも顔はたあ坊そっくりであるが、肌触りはオリジナルほどふわふわしておらず、座布団のようなごわごわした触感だった。また、オリジナルは前述のとおり体を二つ折りできるくらい柔らかったが、2体のたあ坊の体が硬く、半分に折ろうとすると途中で止まってそれ以上曲がらなかった。

たあ坊が1体から3体に増えたのは、修復を請け負った祖母が、かわいい孫に対する愛情のためか、はたまた物づくり好きの血が騒いだためかは定かでないが、修復だけでなく、オリジナルを元に、祖母の家にある布切れなどを使ってコピーを2つこしらえたことによるものであった。

たあ坊を1つ召し出したら、たあ坊が3つになって返ってきたわけである。私の脳裏に昔絵本で読んだ「金の斧 銀の斧」というイソップ物語が一瞬よぎったが、そんなことを思い出している場合ではない。ぬいぐるみが増えた以上、私は名づけという仕事を行わねばならない。私は目の前の3体のたあ坊たちを前に、すぐに名づけの儀式にとりかかった。そして、3体のたあ坊たちは、サイズの順に上から「大たあ坊」「たあ坊→中たあ坊」「小たあ坊」と名付けられたのである。めでたしめでたし。

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