小学生にとって、1学期の終業式の日は、明日から夏休みが始まるという意味で特別な日である。私が小学生の頃、終業式の日には、体育館での終業式が終わって教室に戻ると、夏休みのしおり、宿題のドリル、ラジオ体操カード、読書感想文のために指定図書の中から1冊選んであらかじめ注文しておいた本など多くの配布物が生徒に配られた。封筒に入れられた指定図書の本もうれしかったが、それ以上に私にとって心ときめくものは、かんゆ(肝油)であった。
かんゆというのは、1粒あたり直径1㎝くらいの楕円形の栄養補助食品で、外側は少し硬めの皮で覆われ、中は柔らかいゼリー状となっている淡い黄色のドロップである。私が小学生の頃は、このかんゆが数十個入った平べったい缶が、夏休み前に学校から生徒1人に対し1缶ずつ支給された。そして、先生からは、かんゆは1日1個ずつ食べるようにしなければならず、1度に多くを食べ過ぎてはいけないということもあわせて申し渡された。
私はこのかんゆが好きで、学校から帰ると(終業式の日は午前中で学校が終わるため、そのことも明日から夏休みという高揚感を増幅させた)、配布物でふくらんだランドセルを2階にある自分の部屋に運び込むと、すぐにランドセルからかんゆが入った缶を取り出してふたをあけた。早速、今日の分ということで1粒口に放り込むと、甘酸っぱい味が口に広がり、幸せな気持ちになる。衝動を抑えることが苦手だった私は、1個では物足りなくなり、後1個だけ、後もう1個だけというようにして2個目、3個目と食べてしまい、結局、夏休みが始まって1日目か2日目くらいに缶を空にしてしまうのが常であった。1度に多くを食べ過ぎてはいけないと言われていたが、特に体に異変が起きた記憶はない(ただし、かんゆの過剰摂取が体に良くないことは間違いないようなので決して真似をしないでください)。
時が経ち、時代は令和となり、私の子どもは、1学期の終業式にかんゆを持ち帰ってこないので、学校でのかんゆの配布はなくなったのだと思う。なぜ私の頃はかんゆが必ず夏休み前に配られていたのか詳しくは知らないが、私にとってかんゆは夏休みが始まることの象徴であり、明日から夏休みであることを甘酸っぱい味とともに教えてくれる風物詩であった。
