役決め

ホームルームの時間に黒板の前に集まり、役決めのためじゃんけんをしている

小学校では時々、「役決め」が行われる。それは、運動会の参加種目であったり、学級委員や生き物係などのクラスの係であったり、学習発表会の劇の配役であったり、各生徒に担当を割り振る必要がある場合に行われる。多くの場合、1週間に1度やってくる「ホームルーム」(時間割表ではHRと略称される)という謎の時間を使って行われるのだが、決め方はいろいろである。

ある時、何についての役を決めるためのホームルームだったのかは忘れてしまったが、黒板にそれぞれの担当名とその定員人数が書いてあり、それぞれの生徒が、希望する担当名が書いてある黒板の前へ集まり、希望人数が定員を超えた場合にはじゃんけんで決めるという方法で役決めが行われたときがあった。

役決めの直前、生徒たちの間には一斉に緊張が走る。スタートの合図とともに生徒が希望する担当名が書いてある黒板付近に群がる。私も自席から希望する担当名のところへふらふらと進んで行った。そこにはもう一人のやんちゃな(と私が認識していた)男子生徒がいた。この生徒とは教室では時々話す程度で特に友達ではなかった。その子のほかに希望者はおらず、希望人数2名(私とその男子生徒)、定員1名ということでじゃんけんとなった。私の緊張はMAXに達した。

「最初はグー、じゃんけんぽん!」私はじゃんけんに勝った。やった。しかし、ここからが悲劇の始まりであった。その男子生徒は、私に対し、「三回勝負でお願い」と言ってきた。小学生にしてはなかなかの交渉術であるようにも見えるが、今思えば、その子のオリジナルというわけでなく、おそらく他の大人や友達とのじゃんけん決めのときに経験したことのある手法を踏襲したものであろう。

ただ、気の弱い私は、その聞いたことのない申出に面食らうとともに、相手の勢いに飲まれてその申出を受諾してしまった。私は自分が希望する役を得られるチャンスを手にしていながら、何の対価もなくそのチャンスを手放してしまったのである。その後、三回勝負が行われたが、私はまたしても勝った。なぜかその日はじゃんけんが強かった。万歳!

ところが、今度は「やっぱり五回勝負にして、お願い」と来た。気の弱い私は、あろうことか、この2度目の懇願にも応じてしまった。そして、3度目の決戦の後、私は遂に敗北した。もし私が勝っていたら、さらなる懇請があったのかはわからないが、そのときはきっと7回勝負だったのだろう。どうしてすべて奇数回なのかは謎であるが、それは今回の主題ではない。とにかく私は、負け続けるまで再戦を承諾し、その必然的結果として敗北したのである。

敗れた私は、ほとんど役が決まってしまった担当名が書いてある黒板の前をうろうろしながら、泣きそうな気持ちで、残り物の役を探した。その姿を教卓近くで見ていた担任の先生の、「この子は本当にどうしようもないな。」という哀れみの表情が今でも忘れられない。感受性の強かった私は、自分がそのとき置かれた状況よりも、先生にそのように見られたことのほうがショックで、当時はひどく落ち込んだものである。

今振り返ったら、自分が情けなくなるが、では今の自分はどうかと言えば、気が弱く頼みを断れない性格のままである。「三つ子の魂百まで」というのは少なくとも私にとっては真実である。

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この記事を書いた人

日本の片田舎で、妻と子と暮らす40代の男です。
私が子どものときに起きたいろいろな出来事をブログ形式で投稿しています。気になるタイトルや絵(私が描いています)の記事があれば気軽に読んでもらえるとうれしいです。

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