恐怖の忍者屋敷

ブログ「恐怖の忍者屋敷」の絵

小学生の頃、家族4人で忍者村的なところへ行ったことがあった。「忍者村的」と表現したのは、どこにある何という施設であったのか覚えていないためであるが、とにかく私は忍者村的な施設へ遊びに連れて行ってもらい、そこで忍者屋敷迷路に参加した。迷路なので、当然、入口から入って出口を目指すのであるが、私はこの迷路体験のうちの一場面のみを今でも鮮烈に覚えている。

その場面は開始早々に訪れた。父、母、兄、私の4人で入口から忍者屋敷の中へ入ると、すぐに外から扉を閉められた。そしてまもなく、外から鍵をかける音がした。部屋の中は暗く、ほとんど何も見えないため手を伸ばして探ってみるが、四方いずれも手が壁に触れてしまい、どうやら行き止まりのようである。普通、迷路というのは入口から道が枝分かれしながら先へ伸びているものと思っていた私は、開始早々、狭い真っ暗闇の空間に閉じ込められて面食らった。私たちはどこかに次の部屋へつながる扉がないか、手の平の感触を頼りに部屋をくまなく調べた。しかし、数分が経過しても何も見つからない。私は入ってきた入口をいったん開けようともしてみたが、施錠されているようで開かない。

両親も、最初こそ、どこかに仕掛けが隠されているから探そうという感じで迷路を楽しむ雰囲気であったが、時間が経つにつれて本当に手がかりが見つからず、入ってきた扉も封鎖され、完全に閉じ込められてしまったという事実を徐々に認識し始めたようであった。まだ小さかった私は怖くなってきた。もしかして、迷路というのは嘘で、本当は私たち4人を閉じ込めようとしている誰かの陰謀なのではないか。そうだとすると一生出られないかもしれないとまで考えた。私は父か母に「入口付近に係の人いるかもしれないから、声かけてみようよ。」という提案までしたように記憶している。それくらい、私にとっては、もはや迷路どころではなくなっていたのである。

私たち家族が数分間(おそらく数分くらいだったと思うが、もっと長く感じた)の捜索の末、万策尽きてあきらめかけたそのとき、入口の扉が開いて、新しいお客さんが何人か入ってきた。私は、暗闇の中、何もせずにそのお客さんらが動く雰囲気を感じ取っていた。そのお客さんらも、最初はとまどっている感じで四方の壁に手を伸ばしたりしていたが、やがていなくなった。なんとその人たちは奥へ進んでいったようなのである。進んでいったときバタンと扉が閉まるような小さな音が聞こえたような気がした。「え?どういうこと?」そのお客さんたちが進んでいったと思われるほうをあらためて確認すると、壁に細長いすき間が空いており、そこに爪をかけて引くとなんとそれが引き戸であり、扉が開いたのである。つまり、壁の一部が隠し戸になっている仕掛けだったというわけだ。私がその引き戸を発見したわけではなかったため、一体どこから扉が現れたのか、その時は状況をよく飲み込めないまま先へ進んだ。その後のことは全く覚えていないので、おそらく後は普通の迷路だったのだと思う。私にとっては最初に閉じ込められたときの焦りや恐怖だけが強い印象として脳裏に刻まれた。

一般に、ゴールクリアを目指すゲームは、最初は簡単で徐々に難しくなっていくものなので、最初に最も難しい仕掛けを持ってくるというのは、スーパーマリオ1でいえば、1-1が始まってクリボーでなくいきなりクッパが出てくるようなものであり、ドラゴンクエストⅢでいえば、冒険が始まってアリアハンの城を出ると、スライムでなくいきなりバラモスが出現するようなものであって(世代的にわからない方はすみません)、セオリーから逸脱した斬新な発想である。というように、私は、この体験を時々思い出しては、忍者屋敷を作った人の大胆なやり口に感心したりするのであるが、一方で、私たち家族の窮状を救ってくれた後発のお客さんが難なく忍者屋敷の1面をクリアしていったことを考えると、制作者サイドにそのような特別な意図などなく、ただ私たち家族が迷路に疎かっただけかもしれず、その真相はわからない。この忍者屋敷がどこにあった施設か覚えていないし、30年以上前の出来事なのでもうなくなってしまっている可能性が高いが、できればもう1度行って、あの時の出来事を追体験してみたいと思う今日この頃である。

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